流れに乗っているだけ
オンラインのジャグリング大会「KING OF TRICK 2025」の景品ボールをつくらせていただいた。この日記に書いてきた本革製のビーンバッグがそれだ。
あらためて今回、自分は「素材へのアクセス」が抜群によいところに住んでいて、道具のメーカーにはなるべくしてなったんだなあということを考えた。
今回、革は浅草橋で仕入れた。ビーンバッグに使う合皮もそのあたりで手に入る。自分が住んでいる埼玉の和光市から、べつにそんなに遠くない。
あるいは、むかしから、池袋に行けば東急ハンズでいろんな素材に触れることができた。ジャグリングを始めたての中学生〜高校生くらいのころ。ざっくり2000年ごろ。木の玉も、木の棒も、アクリル素材も、シリコンチューブもある。そりゃあ、道具も自分でつくってみようという気になる。池袋のハンズになければ新宿のハンズ、あるいはもっと行って渋谷のハンズ、とはしごすることもあった。そもそも「ハイパーディアブロ」を先行販売で購入したのも池袋のハンズだった。なんでも夢中で触って、想像をふくらませた。
わざわざ遠出しなくても、市内の島忠で木の素材は見ることができたし、アルペンでテニスボールやポンプを買って、最初の自作ボールをつくることもできた。それだけでもすごく恵まれていることだと思う。
和光市からは、ナランハへも東武東上線一本で行けた。各駅電車で20分。行ったら、有名なジャグラーが店内のテレビで大会のビデオを見ている。そこに出くわしたときのとんでもない刺激。それだけのことだけど、それだけで半年や一年はジャグリングを続けてしまうくらいのモチベーションになる。なんならいまもまだ、その経験がモチベーションになっているかもしれない。
いまこの時代に、日本の、埼玉というところに住んでいて、なんだかんだ、ジャグリングにも道具づくりにもアクセスがよくて、いろんなイベントやものに触れられて、ただその環境にいたから、僕はジャグリングを続けていたのだと思う。なにかひとつの経験が欠けていたら、辞めていたかもしれない。
「刻印のある本革製のボールをつくりたい」と思ったら、刻印をネットで注文して届くだけの国に住んでいて、革のお店が立ち並ぶところに電車で行って、半日でちゃんとしたものが手に入ってしまう環境にいるのである。なるべくしてなっているんだとしか言えないし、そのことにもっと感謝をしてもいいなと思った。自分はただ、流れに乗っているだけなのだ。