1997年にハイパーヨーヨーという商品が発売されブームになりました。技術を身につけて遊ぶスキルトイであるヨーヨーは、ジャグリングと通じるものがあり、当時夢中になって取り組んでいた子供たちが、のちにジャグリングの世界でも活動していきます。僕もそんなルートをたどった一人です。中学生だった当時、少年誌で見た瞬間に運命を感じ、すぐにおもちゃ屋をめぐって手に入れました。
さっそく毎日夢中で練習したものの、なかなか難しい技ができるようになりません。しばらくして、自分のヨーヨーはベアリングを内蔵していないので、回転が続かず、上級技がそもそも不可能であることを知ります。その後、ベアリングモデルを買ったものの、今度はベアリングをはさむスペーサーが薄いものの方が、特定の技は段違いにやりやすい、ということを、これまたずいぶんと練習した後で知りました。ヨーヨーという道具はとても精密で奥深く、機種やセッティング方法が、技のやりやすさと深く関連していたのです。
そのため、やりやすい道具が何なのかを知ることが、練習と同じくらい大事でした。当時の僕は、まだインターネットを自由に使える環境になく、一緒に練習する友達もおらず、そうした情報からほど遠いところにいました。道具の知識がなかったせいで、まぬけなくらい遠回りをしてしまったのです。
そんなくやしい経験があり、ジャグリングを始めてからも、技がやりづらいのは道具のせいかもしれない、と常に疑ってきました。もちろん、それがすべてではないことはわかっています。でも、道具を気にかけずにはいられない。他人のジャグリングを見るときも、技や演技よりも、どんな道具を使っているのかに真っ先に注目するクセがついてしまいました。その習性は、やりやすさ以外の面で道具に関心がある今でも、まったく変わっていません。子供のころに夢中になったヨーヨーの経験は、今のものの見方につながる原体験だったな、と思うのです。
(第7回へ続く)
この原稿は書くジャグリングの雑誌:PONTEが発行するメルマガ『週刊PONTE』2018年vol.8(2018/12/31発行号)に掲載されたものです。