たまむすび 第9回「ものの質感とジャグリング」


昨年からスエード生地のビーンバッグをつくっています。一般的なビーンバッグに使われているレザーとは違って、ふわふわ、さらさらの手触りで、投げていてとても気持ちがいいのです。その試作を投げ比べているときでした。ふと、僕にとってジャグリングは、ものの質感を楽しむための媒介でもあったんだ、と気づきました。ジャグリングを通して、新たな質感との出会いを楽しんでいたのです。

私たちは日常生活で物体を見たり触れたりして感じていますが、ジャグリングをしているときは、そこにはない情報がどんどん身体に伝わってきます。形や重さはもちろんのこと、うまく言葉にできないような、強さや、やさしい感じなど。

その感覚は、昔ヨーヨーをやっていたときにもありました。ヨーヨーをしているときは、機種の特徴や、紐のヨリ、オイルの状態の変化などのさまざまな情報を、常に指で感じます。道具の質感を、技を通して身体で受け止め、しかもそれは刻一刻と変わっていく。子供のころの僕は、それまで体験したことのなかったその感覚にわくわくしていたのです。

ヨーヨーに続けてジャグリングを始めたのも、どこかでそのわくわくを求めていたからだったと思います。僕は特定の道具を極めることよりは、いろいろな道具に興味がありました。そして、カスケードのようなシンプルな技が好きで、それだけでも充分楽しめていた。歴が長いのに突き抜けた道具や技術がないことにコンプレックスもありましたが、今思えば、基本技だけでも、ある意味では充分だったのです。むしろ動き自体はシンプルな方が、より繊細にものの質感を楽しめていたのだと思います。

いま、ジャグリング道具をつくっている時間も、ものの質感を楽しんでいます。投げる前から、ジャグリングと地続きな時間を過ごしている。完成したあとこれを投げたら、どんな感覚なんだろう、とわくわくしています。すべてのことは、心の奥でつながっていたのです。


 

この原稿は書くジャグリングの雑誌:PONTEが発行するメルマガ『週刊PONTE』vol.17(2019/3/4発行号)に掲載されたものです。